【三浦貞広の野望の小芝居】その3

以下は単なるフィクション小芝居なので、読み飛ばしても問題ありません

 

 

 

 

 

 


 

――1575年6月某日、天神山城

 

「貞広様の婚礼だ。我ら新参も酒宴の末席に加えていただけるとは。もうすぐ開始だが……」

 

「まったく、このまま三浦家にいてよいものか。三浦家は仇敵のはず(-3)じゃし、何より貞広様とは反りが合わぬ(-1)」

 

「三浦家中ではミウラケサイコウと口にしておるが、儂はその言葉の意図がいまだにまったくわからぬのだ」

 

「儂もじゃ。それに殿とは反りが合わぬ(-1)」

 

(この有様じゃ。儂は殿とはうまくやっていけそう(+3)なんだがなぁ。まぁどうでもいいか)

 

 

 

 

ズウン ズウン

 

「ん、なんじゃこの音は……」

 

「まずい、牧良長だ! 牧良長の足音だ!」

 

「えっ、これが!」

 

「うぬら、何をしておる」

 

「ま、牧殿」

 

「兄者、どうやら新参衆が集まっておるようじゃのう。何か聞こえた気がしたが」

 

「うぬら、このような場でコソコソと陰口をしておるなど、なんたる軟弱ッ。精進が足らぬのよ。我とて主とは反りが合わぬ(-1)し、所領が働きに見合っておらぬ(-3)が、何ら問題はないわ」

 

「おいおい、牧殿も不満だらけではないか……」

 

「じゃかあしい! だらず! 精進せえ! 我ら三浦家はミウラケサイコウを成すことこそ肝要、ミウラケサイコウせぬものに未来はない!」

 

「そ、そもそもミウラケサイコウとは何なのだ! 貴殿らとて、ミウラケサイコウが何なのかわかっておらぬであろう」

 

「…………」

 

 

 

 

「…………そんなことは、断じてない! 良いだろう教えてやる。ミウラケサイコウとは、自己研鑽を極め、華々しく戦場を駆け抜ける益荒男どもの理想形となることじゃ!」

 

「えっ兄者、何を申される。ミウラケサイコウとは公正なる政を為して、広く領民を安んずることではないですか」

 

「権謀術数の限りをつくして権力を手にするんじゃ」

 

「むむむ」

 

(こいつら……絶対わかってねぇ!)

 

「――だく。織田信長がテンカフブじゃ毛利元就がヒャクマンイッシンじゃ上杉謙信がギセンじゃ北条氏康がロクジュオウオンじゃと言うておるが、家中では意味のわかるものなどおらぬ。同じことじゃあ」

 

(なんちゅう暴論じゃ。しかし、そうなんじゃろうか)ヒソヒソ

 

(いや、そんなわけないじゃろ)ヒソヒソ

 

「ぬぅ!」 ドゴン

 

ビクッ「い、いきなり足をならされるな」

 

 

 

 

 

 

「善き香りが我の鼻孔をつきおった! 戦の芳香じゃあ。いずれ大きな戦があるぞ。ガハハハハハ、身体が疼きよる。おい国信、楽しみじゃのう!」

 

「そうですね」

 

「うぬらも文句があるなら武功をあげよ。精進せえ」

 

ズウン ズウン

 

「ひえー……」

 

「いやぁ焼き討ち、略奪ばかりしていたからか、兄者も変わられたのう。戦というものは、げに恐ろしいもんじゃ」

 

「じゃあじゃあ」

 

(いや、おかしな方向に変わりすぎだぞい……)

 

「嵐のような男じゃな。ぜひ一度、手合わせ願いたい」

 

(大丈夫なのかこの三浦家は。まぁどうでもいいか)

 

 


 

 

「才五郎、もう酒宴が始まるぞ。こんなところで何をしておるのだ?」

 

「叔父上ですか。この天神山の庭にも榧(かや)の木を植えておりました。榧を植えれば我らが居た証を残すことができる。こうしておれば、いずれ天にも届きましょう」

 

「辛気臭いのう! 我ら三浦党はこれより先も脈々と続いていく。それを示すことこそミウラケサイコウだろう。当主がそれでどうするつもりじゃ」

 

「そうですな。それもまた、ミウラケサイコウでありましょう」

 

「どうも歯切れが悪いのう。そういえば桃寿丸から文が届いたとか」

 

 

桃寿丸『某は父を二度も殺された。伯父上の世話になるつもりはないので出家します。止められれば腹を切るゆえ、どうか構われぬようお願い申し上げる』

 

 

「恨みつらみが書かれておる。宇喜多直家を切ったことがよほどこたえたようだな」

 

「桃寿丸め……。まぁいい、放っておきましょう。奴は父上に似て喧嘩っ早いし頑固だから、止めても無駄でしょう」

 

 

 

「そうだ叔父上。いずれ毛利と戦になりますぞ」

 

「な、なんだと!?」

 

「なぜだ。戦ができぬから、どうにか同盟しているのではないか。我らが毛利に独力で勝てるわけがないだろう。――織田家か。いやしかし、儂には織田からの援軍があてになるとも思えぬぞ」

 

「当の織田家からもせっつかれておるのです。家中の意見は割れるかもしれませぬが、毛利と織田、どちらと言えば我らの縁戚となった織田家を優先するは道理。そして今は織田に従うほかありません。いずれにせよ毛利とは雌雄を決せねばならぬとも思うておりました」

 

「しかし叔父上が最後まで付き合うことはありませぬ。戦となり矢玉尽き果てたその際は、三浦の未来を、桃寿丸をお願いいたします」

 

「はぁッ!?」

 

 

 

「――何を言うかと思えば、やはり才五郎じゃ。それで三浦の男と言えるか? はは、わははは、織田や毛利がなんのその! 我ら天下の三浦党ぞ。これより酒宴だ、皆、待っておる。酒だ、酒を呑むぞ!」ドコッ

 

「ぐえっ!」

 

「この際、中国を榧で埋め尽くそうではないか!」

 

「叔父上、変わられましたな。……ミウラケサイコウ……ええ、俺はミウラケサイコウをしなければならない」

 

「そうじゃ。ミウラケサイコウ!」

 

「ミウラケサイコウ!」

 

(安心せい、才五郎。この貞盛、三浦貞久に代わり、お前のミウラケサイコウを見とどけてやるわ)

 

 

 

 

 

 

「しかしな、こたび長宗我部と婚姻したのもそうじゃ。才五郎、口ではそう言いながら、腹の中には毛利と戦うための策があるんじゃろ?」

 

「ありませぬ」

 

「何っ」

 

「策はありませぬ。今はとにかく、内なる声にしっかりと耳を傾けることです。さすれば道は開かれます。ミウラケサイコウも同じことです」

 

「はは、わははは……」(相変わらず何を言っているのかわからぬ。不安になってくるわ……まぁ、泥舟でも運が良ければ対岸に届くだろう)

 

「わかりませぬか。いま、我らに必要なのは志なのです、叔父上。さらに言えば『大志』。武士たるもの、己の野望を達するためには『大志』なくしてなしえませぬ」

 

「大志、か……」

 

 


 

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