【三浦貞広の野望の小芝居】その1 ミウラケサイコウ

 

以下は単なるフィクション小芝居なので、読み飛ばしても問題ありません

 

 

 

 

1566年ごろ、二度滅亡した三浦家は浦上家を後ろ盾とし、家臣たちの協力を得て再び高田城に立ちあがった。

その三浦家当主となった三浦貞広と、叔父・貞盛は、高田城の庭を眺め、亡き三浦貞久を偲んでいた。

 

 

――高田城

 

sr_sadahiro「ようやく、この高田城の庭までたどり着きましたな」

 

sr_sadamori「うむ。才五郎。苦難であったな。よう、よう頑張ったな。儂は、儂は――っ!」

 

sr_sadahiro「叔父上……」

 

sr_sadamori「(兄上、才五郎は、立派に元服した。あのころの兄上と、同じ年の頃となったぞ)」

 


……

 

sr_sadamori「すまぬな、才五郎。年甲斐もなく、感極まってしまった」

 

sr_sadahiro「いえ。俺も、胸が一杯です。ようやく父上と同じ場所に立つことができたのだと思えば……この庭にもまた、特別な感情が湧くというもの」

 

 

 

 

 

sr_sadahiro「しかし叔父上、それはそれとして、今この状況で、三浦家はミウラケサイコウを果たしたことになりましょうか」

 

sr_sadamori「……ん? いま、なん、と? 三浦家再興、を?」

 

sr_sadahiro「ミウラケサイコウです、叔父上。俺はそれが成されているとは思いませぬ。叔父上、俺は、ミウラケサイコウを果たすまでは死んでも死にきれぬのです」

 

sr_sadamori「何を申すのだ才五郎。我らは高田城を取り戻した。すでに三浦家再興は成されたであろう」

 

sr_sadahiro「いいえ叔父上、それは違う。ミウラケサイコウとなるには、――まず領地を拡大する必要がある」

 

 

 

sr_sadamori「(な、何を言っているのかわからぬ……誤解があるのか)」

 

sr_sadamori「おい、よいか、才五郎。そもそも、三浦家、再興というのはだな……」

 

 

 

――お話は聞かせていただき申した!

sr_kashinsr_kashinsr_kashin

 

 

sr_sadamori「お、お前らは、――(モブ)家臣たち!」

 

sr_kashin「ただの(モブ)家臣たちではございませぬ」

 

sr_kashin「我ら、いずれもこの所領回復に尽力した三浦家臣」

 

sr_kashin「じゃあじゃあ」

 

ババッ

sr_yoshinaga「家臣改め、それがし、牧良長! 三浦家再興に関してはおまかせくだされ」

 

ババッ

sr_kuninobu「同じく、その弟、牧国信! 三浦家再興に関してはまかせてくれ」

 

ババッ

sr_kashin「じゃあじゃあ」

 

sr_sadamori「(お前はそのままか……)」

 

 

sr_yoshinaga「殿は三浦家再興はなされておらぬと。そう仰るのですな」

 

sr_kuninobu「であれば当然、我らが三浦家再興のお手伝いをせねばな」

 

sr_sadahiro「うむ。牧良長に国信! ……ならば早速だが、備中へと刈り働きに出てくれるか」

 

sr_yoshinaga「ははっ……では、三村家を……」

 

sr_sadahiro「そうだ。俺の弟、貞勝を自害に追い込んだ三村家を許すわけにはいかぬ。いずれやつらの居城、備中松山城は……攻め落とす!」

 

sr_yoshinagasr_kuninobu「ははっ」

 

sr_sadahiro「そして成しとげるのだ。――ミウラケサイコウを!」

 

sr_yoshinaga「ミウラケ……サイコウ!」

 

sr_kuninobu「おう! ミウラケサイコウ!」

 

ミウラケサイコウッ! ミウラケサーイコウッ!

 

sr_noriharu「やれやれ、面倒なことになったぞい」

 

 

 

 

sr_sadahiro「では叔父上、あとは頼みました」スタスタ

 

sr_sadamori「……」

 

 

 

sr_sadamori「才五郎――」

 


 

20年前――

 

sr_sadamori「どうした才五郎」

 

sr_sadahiro「おじうえ、その……ご質問があります」

 

sr_sadamori「わかった。5秒以内で申せ」

 

sr_sadahiro「ミウラケサイコウ……とは、その、いったい、何をいみすることなのでしょうか」

 

sr_sadamori「……6秒かかったぞ、この痴れ者が! それくらい自分の頭で考えろ!」

 

sr_sadahiro「…………ぐすっ」

 

sr_sadamori「(すまぬな才五郎、これもお前のためなのだ。自分の頭で物事を考えられぬものに、この乱世は生き抜けぬ。強く生きよ、才五郎! そして三浦家再興を成しとげるのだぞ……!)」

 

sr_sadamori「……ゴホン。蜜柑がある。あちらで食べようか」

 


 

sr_sadamori「……儂としたことが、教育を間違ったか……まさか本当に三浦家再興の意味がわからぬまま元服するとは。なんという……ああ、阿呆の子となってしまったのだ、才五郎っ!」

 

sr_sadamori「――いや、それはまだいい。だが、三村元親の背後にはあの毛利家がおる……感情まかせの行動に、家臣たちを巻き込むことになるのだぞ。三浦の当主となったこと。その意味をわかっておるのか――」

 

 

 

――貞盛様!

 

 

sr_yoshinaga「そんなこたぁ我ら、覚悟の上じゃあ。この良長、貞広様とはそりが合わぬ-1が、身命をとして三浦家に尽くす所存じゃ。こたびの再興こそ、三浦党の力を近隣に示す時じゃろう。そして、ミウラケサイコウをいたそうではありませぬか」

 

sr_kuninobu「貞盛様、三浦家の存続は、もとより我々にとっても悲願。我ら何度も滅亡したが、こんな状況で領地拡大、今までその発想はなかった。我らはいよいよ、そうあらねばならぬのかもしれぬ。貞広様とはそりは合わぬが-1

 

sr_kashin「じゃあじゃあ(貞広様とはそりは合いませぬが-1)」

 

sr_sadamori「貴様ら……」

 

sr_sadamori「はは、わはは。ミウラケ、サイコウ。ミウラケサイコウか。口にしてみると不思議な響きだな……。よし、じつは才五郎とはそりが合わぬが-1、儂も腹をくくるとするか!」

 

sr_noriharu「(貞広様、人望なすぎだぞい。かくいう儂もやつとはそりが合わぬけど-1……)」

 

――

 

sr_sadahiro「へっくし! ずず……風邪をひいたかな」

 

sr_sadahiro「前途多難だが、家臣たちの士気は高い。“ミウラケサイコウ”のもとに団結したのだ」

 

バサッ

sr_sadahiro「叔父上の部屋で見つけた、三浦家の生き残る道が示された書物――父上、見ていてくだされ。俺は必ず――”ミウラケサイコウ”をする!」

 


 

その日から三浦家中は皆、言葉の定義もなされぬままに「ミウラケサイコウ」を口にするようになったのである。はたして三浦貞広のミウラケサイコウは、そりの合わない家臣たちとともに成されるのであろうか……。

 

 

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