以下は単なる小芝居なので、読み飛ばしても問題ありません。
大崎義隆が没したことで、急遽、大崎に属する有力者たちが集められた。
「お集まりいただけましたな。ここに殿の意向がしたためられた書状があります。僭越ながら、私が読み上げましょう」
(の書状)「かくかくしかじか。こういうわけで――――――大崎文を当主とするっ!」
「ククク……女がこの大崎家をまとめると……。付き合っておられんぞ……ままごとには」
「―――ちなみに、文は実は男なのだ。騙してすまないのう。そういうわけで、家臣一同、大崎家を盛り立てていくように!」
「……そういうわけだ。これからは目安箱も関所も取っ払うぞ!私は今後、大崎義興と名乗る!」
「たまげたなぁ。だから胸がないし、戦場でも隆信殿より活躍していたのか」
「姫を名乗っていた文様が、実は男……そこに義はあるのか? 胸はなさそうだが」
「女にしてはやけに胸がないと思っておった。なるほど納得じゃ」
「(ビキビキ) 話は終いだ! ◯◯ども! 早速戦だぞ! 皆の力、存分に豊臣に見せつけてやるのだッ!」
オウッ!
「どうでもよいわ。この件はすでにわかっておった。やつが女だとしたら、いずれ無理もくる。我らはそれまで待てば良い。まずは領地を取り戻すが先ぞ。雑念は隙となる。余計なことは考えず、戦の支度を整えるのだ」
「大崎義隆に不意打ちを受けた……あの不義、今も忘れられぬ。起つなら今しかない……が、それもまた不義となるか……」
「殿、不意打ちを受けたとて、元はといえば我らが最上を攻めたことが発端。それを棚に上げ、所領を与えていただいた恩を忘れるは愚の骨頂。しかも大崎義興様、口は悪いですがその名にまで「義」の入った御仁ですぞ。間違いはなかろうかと」
「すでに懐柔されていたか……あやつら……。許せぬ……このような茶番は」
「おい……そこのじゃじゃ馬。騙し通せぬぞ……この独眼アイは。あらためさせてもらう……本当に男かどうか……ここで!」バッ
「よい、隆信。……ところで政宗、あんたを一門に迎えることにした。これも父の遺志だ。私には子はおらぬ。これがどういうことか、わかるだろう?」
「……。ククク……そういうことか……。ならば大崎義興、せいぜい気をつけるんだな……夜道には……」
「……? まぁいい……大間違いだぞ……独眼竜を飼い慣らせると思ったらなぁ!」
(殿も問題を先送りにしたということか。しかし義宣のことといい、伊達家にはいつまでも悩まされるのか。……したたかさには感心するが)
「あやつ……どういうことだ……俺の本音だと……? わからぬ……何のことか……この明晰な独眼頭脳をもってしても」
「……!? バカな……何だこの文言は……いつの間に……。この独眼竜が……!?」
「ふんっ。言うな。武家に生まれたからには、これくらいの覚悟はあるんだよ」
「隆信! 今後その名を口にすることは許さぬ。次からは肘鉄砲が飛ぶから心得ておきなさい」
「……にしても隆信、お父上ほどじゃないけど、あんたってほんとパッとしない顔だわ。どうにかならないの?」
(声が震えている……。無理もないか。このような訳のわからぬ状況で)
(これが大崎家の進む道というならば、私は最後まで成し遂げてみせる……お父上、お見守りください)