【三浦家の野望の小芝居】その2 黄粱一炊

 

以下は単なるフィクション小芝居なので、読み飛ばしても問題ありません

 

 

 

―――月山富田城。

 

sadamori「この度は、めでたき正月になりましたなぁ」

 

sadahisa「うむ、一時はどうなるかと思ったが……あの尼子を下したのだな」

 

nakamurasan「いや、某、はじめから信じておりましたぞい」

 

kashin「儂もじゃ」

 

kashin「殿は漢じゃけぇ!」

 

kashin「いよっ日の本一!」

 

kashin「美作一!」

 

sadahisa「うむうむ、貴様ら、よく頑張ってくれたな!」

 

 

―――

 

kumon「正月なので、儂はひとつ餅をつきましょう」ペッタンペッタン

 

kashin「いよっ、公文重忠は餅つき日本一!」

 

kashin「この餅武将!」

 

sadamori(なぜだ……すごい皮肉に聞こえる)

 

 

 

kumon「できました。まず儂が毒味をば。モグモグ」

 

sadahisa「わははは。これは見事な餅じゃ。五大力餅会陽さながらだのう。さすがは公文重忠。ムグムグ……」

 

 

sadahisa「うぐっ……!?」

 

sadamori「兄上!?」

 

sadahisa「……」

 

sadamori「おいおい兄上、こんなめでたい時に悪い冗談は……? 息がない……餅を喉につまらせたのか!? 長き戦乱の間に、こんなにも兄上の気管支が弱っているとは……おい、何をしている! 医者だ、早く医者を呼べ!」

 

 

kashinkashinkashinドタバタワーワー

 

 

sadamori「公文殿、兄上の背中を思い切り叩くのだ!」

 

kumon「むむむ、殿! お気を確かに」ドカドカ

 

sadahisa(意識が……このままでは……)

 

 

sadamori「兄上!」

 

sadahiro「皆ちょっと待って、父上が何か言おうとしている!」

 

sadahisa(五郎……貞盛……後は……任せたぞ!)

 

シーン

 

sadahisa「」

 

sadahiro「死んだ……」

 

kashin「殿が死んだ!大変じゃぁ!」

ワーワードタバタドタバタ

 

 


 

 

ドコドコワーワー

 

 

 

sadahisa「うぅ……土埃と……粥の匂いが……ここは……」

 

roujin「ヒヒッ心地よき夢から目覚めたか?」

 

sadahisa「まさかここは、高田城……! そして俺は、まだ20代……」

 

roujin「そうじゃ。ほれ、ようやく粥が煮えたところじゃよ」

 

sadahisa「そうか……夢だったというわけか」

 

roujin「そう、夢じゃ。全ては一瞬。一炊の夢じゃ。あんたが尼子に負けたこと以外は」

 

sadahisa「ふん……ただの夢じゃない。貴様が俺を化かしたんだろう。面相からして怪しいが、実際、妖かしの類だったというわけか!」

 

roujin「ひひッ……そうきたか、失敬な男じゃのう。妖かしなどではなく、行者と呼んで欲しいところじゃ。どうじゃ貞久よ。人の一生や家の盛衰など、先の夢のように儚き一瞬。いわば虚無も同じじゃ。そうは思わぬか」

 

sadahisa「虚無……だと?」

 

roujin「そうじゃ。儂はその虚無を埋めたい。そのために儂が望むのは、天下じゃ」

 

sadahisa「天下? 天下とは何だ。どういう意味で言っている? まさか―――」

 

roujin「ひひひ、新しい日ノ本の支配者になることじゃ。儂はたしょう幻術ができる。この場を切り抜けるなど造作もないことじゃ。ひとまず騙されたと思って三浦家を預けてみろ。政は儂、戦は貴様。力を合わせて虚しきを埋めようではないか」

 

roujin「貴様を夢で育てたのもそのためじゃ。ほれほれ、三浦家は儂にまかせておればよい、粥でも食ってよく考えろ―――」

 

sadahisa(どうも頭がぼやける……寝起きのせいか、この粥の匂いのせいか……。とにかくこのジジイは三浦家を、この世を玩具のように思っている。こんなジジイに三浦家の命運を託すわけには---)

sadahisa「は、ははは……三浦家を貴様に預ける……? わは、わはははは!」

 

roujin「―――!?」

 

sadahisa「このジジイ、また俺を誑かそうというのだな! 貴様に三浦家を預けるつもりなどないわ! 人の一生が虚無だと? そのように思ったこともない! そう思うのは、貴様自身が根なしだからだ。貴様自身が、虚だからだ! 行者はとっとと山に帰れ!」

 

roujin「カカ……吠えるのう。そこまで言うのなら無様に敵に負けて城を失う今、あんたにあるものは、いったい何だ。教えてくれぬか」

 

sadahisa「……三浦家当主の誇りだ。俺はどこまで行っても三浦家の当主。この美作で三浦家を背負っているという自負がある。今から俺が腹を切るのもそのためじゃ! わかったかこの薄汚いジジイめ」

 

roujin「ハァ……つまらんつまらん。まったくつまらん男じゃのう。ここで死ぬ負け犬に語れる誇りなどあるものか」

 

sadahisa「ふん、貴様には生涯理解できまい。短い余生をせいぜい楽しむのだな。---たとえ俺が死んでも三浦家は必ず再興する。その底力を持っていること、夢に見たわ」

 

roujin「ヒヒッ……夢。まぁ、せっかくだからそのつまらんハラキリとやら、見せてもらうとしよう。夢のお代はその見物料でチャラにしてやるわい」

 

sadahisa「貴様などには本来見せるものでもないが、勝手にしろ」

 

roujin「かかか……心の広い当主で助かるわい。餅で死ぬんじゃなくてよかったのう。儂の名は……そうじゃな、果心、果心居士じゃ。地獄の鬼どもによろしくな。そして儂はこう見えてもジジイではない。本当はあんたと同世代じゃ」

 

sadahisa「嘘つけ!」

 

 

 

kashin「殿! いかがなされた、一人でブツブツと」

 

kashin「いや待て、おい、変なジジイがいるぞ!」

 

kashin「何をしている! なんだ、うまそうな粥を炊いてるようじゃ」

 

kashin「うむ、うまそうじゃ」

 

 

roujin「邪魔が入ったな。しばらく隠れるとするか。ではな」

 

sadahisa「その面、二度と見なくて済むと思うとせいせいするわ」

 

roujin「ヒヒッ……」

 

 

kashin「おっ消えた! どこに行った」

 

kashin「粥をおいて行ったぞ!」

 

sadahisa「放っておけ。それより……尼子に降伏の使者を出せ! 条件は俺の切腹だ」

 

kashin「すでに出しております。ですが、交渉が間に合うかどうか……」

 

kashin「殿、殿ッ! もしも殿が腹を切られ、我ら生き残っても、機が熟した時に必ず三浦家再興のお手伝いをいたしますぞ。安心して冥府へと旅立たれませッ!」

 

kashin「じゃあじゃあ」

 

 

sadahisa「貴様ら……(どれが誰なんだよ……)」

 

 

――

―――

 

sadahisa(どうにか交渉が間に合ったか。貞盛、五郎……後は頼んだぞ)

 

sadahisa「ふ、ぬぐっ……ぁ」

 

 

roujin(ふん……)

 

―――

――

 

 

 

 

sadamori「―――それで、兄上は?」

 

kashin「見事に腹を召されたとか」

 

sadamori「そうか……ご苦労」

 

kashin「はっ」

 

 

sadahiro(五郎)「ううっぐすっ……父上……」

 

sadamori「泣くな、五郎。今後は儂らが三浦家を引っ張ってゆくのだぞ。兄上……三浦貞久の無念は、いずれ我々が果たさねばならない」

 

sadamori「儂らが三浦家を再興する。お前には辛い役目を負ってもらうことになるかもしれぬ。泥水をすする覚悟をしておけ」

 

sadahiro「ぐすっ必ず、ミウラケサイコウする……」

 

sadamori「……よし! 明日は早い、今日はよく眠れ」

 

 

 

 

 

sadamori(ふぅ……五郎よ、お互い、苦しい立場となったのう)

 

 

ガタッ

 

 

 

sadamori「誰だッ!」チャッ

 

ガラッ

 

サル「キーキー」

 

sadamori「なんだ、サルか……」

 

 

 

sadamori「しかし兄上、本当に腹を切ったのか。いまになって、儂には信じられんぞ……」

 

sadamori「ん、戸の端に、何か……書物か? 虚・高田城主次第? 何だこりゃ。暗くてよく見えないが、なんとなく……馬鹿馬鹿しく……懐かしい感じがする……」

 

 

 

―――頑張れよ

 

 

 

sadamori「兄上の声……? いやいや、まさか……。はは、わははは。ちょっと肩に力が入りすぎていたかな。どうも、儂も疲れているらしい。少し休むとしようかな―――」

 

 

 

 

 

 

 


 

 

miura1_1_18

1534年11月、当主・三浦貞久の奮闘むなしく、尼子家の手によって三浦家は滅亡。高田城を囲む美作の山々は、新たな季節の訪れを告げようとしていた。

 


人気ブログランキングへ

 

広告

【三浦家の野望の小芝居】その2 黄粱一炊」への8件のフィードバック

  1. 相模原

    お久しぶりです
    遅くなりましたが、明けましておめでとうございます

    さて、公文の餅つきの件には思わず笑ってしまいました。餅つきの日本一とは(笑)
    三浦の野望が続かない理由もそういうことなら納得です。全て貞久の夢の中だったとは。完全に踊らされてました。
    貞盛、貞広によって三浦が再興するよう自分からも
    言葉を送って締めさせていただきます
    ―――頑張れ!

    返信
    1. 木坂万倉 投稿作成者

      >相模原さん
      あけましておめでとうございます!

      もう正月ということで公文さんのモチネタでした。餅つき日本一とは何でしょうね。
      そして夢については。最初からこうなる運命だったのです。本当です。お許しください!mm

      三浦家への応援、ありがとうございます!
      ここでは続きませんが、貞盛と貞広はきっと手段をつくして三浦家を再興することと思います。

      コメントありがとうございました!mm

      返信
  2. なみたろう

    遅くなりましたが明けましておめでとうございますm(_)m

    ま…まさかの夢オチ!(笑)

    山田垂直もあんなに活躍していたのに!

    信長201Xでは星3武将に抜擢されたのに(笑)

    でも面白かったです(^_^)

    次回に期待します!

    返信
    1. 木坂万倉 投稿作成者

      >なみたろうさん
      あけましておめでとうございます!

      はい。夢オチでした……。

      山田重直ですね。彼の武功も夢の彼方となってしまいました……。
      でも、彼は信長の野望201Xで星3武将だったんですね! 驚きです。
      私はまだ見つけていませんが、味方になったら育ててみようと思います。。

      次回は未定ですが、戦国立志伝をプレイしたら何か書こうとは考えています!

      コメントありがとうございました!mm

      返信
  3. なみたろう

    あ、山田重直でしたね^^;

    一応公式サイトの登場武将のところで見れますよ^ ^

    あのしたり顏はそのままに、

    お口にピアスのまさかのビー系スタイルでした(笑)

    見たらまず爆笑必至ですw

    返信
    1. 木坂万倉 投稿作成者

      >なみたろうさん
      ビー系山田重直、見てきました。そして吹きました。

      あれは現代の生活を堪能していますが、武将の生き方を放棄していますね。
      間違いありません……。

      返信
  4. ちょろ

    三浦家の野望、お疲れ様でした。
    三浦家の命運はついぞ変わりませんでしたが、尼子家との死闘を(夢の中ではあるけれども)制した貞久殿の最期は暗いものではなく、力強さを感じるもので感動しました。

    今月発売予定の「信長の野望 創造 戦国立志伝」をご購入されるということで、これからのプレイ日記もとても楽しみにしております。

    返信
    1. 木坂万倉 投稿作成者

      >ちょろさん
      コメントありがとうございます!

      そう簡単に時間が戻るわけはなかったのです……。
      三浦家再興が果たされる時、そこに三浦貞久の意志も残っているのかもしれません。

      『戦国立志伝』はもう両手両足でどうにか数えられるくらいに発売日がせまってきましたね。
      プレイ日記については……ほどほどに楽しみにしていただければと思います!

      読んでいただいてありがとうございました!mm

      返信

木坂万倉 へ返信する コメントをキャンセル

コメントは反映されるまでに時間がかかります(スパム対策のため)。